『灼熱の魂』足を踏み入れたら最後、知らなかった頃には戻れない。

映画。

この作品は、知らないまま観てほしい。
観終えた人としかこの映画の話は出来ない。
道連れは、ひとりでも多いほうがいい。

『灼熱の魂』
この映画は衝撃的な展開があるらしいと聞き、観始めた。



観終えて思ったこと

最初はただの手紙だった。
ただの家族の話だと思っていた。

ところが気づけば、私は双子と一緒に過去を辿っていた。

でも一歩進むたびに、
知らなかった頃には戻れなくなっていったーー。

母親の遺言により、
双子の姉弟が父と兄を探すという話から始まる。

ヒューマンミステリーと書いてあったが、
こんな気持ちになるなんて誰が想像できただろうか。

絶対ムリ!

ネタバレあり感想

父と兄を探すだけの話だと思っていた。

母の過去を知るだけだと思っていた。

姉のジャンヌが母の足取りを追うため、
ダレシュへ向かう。
ここからは彼女と一緒に、
母ナワルの人生を知っていく。

この、一緒に真実を知っていく過程がとても素晴らしい。

派手な演出もなく、説明されることもない。
まるでドキュメンタリーのようなのだ。
だからどんどん物語へ吸い寄せられていく。

1時間を過ぎたくらいで、
物語は急展開する。

ここがかなり衝撃的で、
目ん玉飛び出るかと思った。笑

私はナワルのストーリーが始まった時から、
難民やキリスト教徒、ムスリム教徒の関係性、
誰がどちら側なのか、
正直ずっとごちゃごちゃになっていた。

でもこの急展開でぼんやりと見えていたものが、
ちょっとずつピントが合っていくように感じた。

そして振り返ると、
若き日のナワルを描く序盤から、
その予兆はあったんだよね。

そして私はここから、

足を踏み入れたら最後、
知らなかった頃には戻れない、
蟻地獄へ迷い込んでしまったのである。


そしてジャンヌもこの真実を一人で抱えきれなくなり、
カナダから弟のシモンを呼び寄せる。

公証人のジャンも加わり、
ここからストーリーが一気に加速していく。

この時点でわたしは、
噂に聞いた衝撃とは、これだったのか…。
そう思っていた。

余韻を引きずりつつ、
シモンとジャンと一緒に
ナワルの人生をさらに追っていく。

双子の父が判明するが、
本来なら十分衝撃的なはずなのに、
私はすでに感覚が麻痺していた。笑

現地の公証人マダッドも加わり、
現地式のやり方で次は兄に迫っていく。

シモンが現地の人とお茶をして仲良くなり、
「ナワルの息子が人探しをしている」
という噂になるだけで、
向こうからコンタクトしてくる。

どんな情報網してるんだ。

怖すぎる。

笑えないけど、
ちょっと笑ってしまう。

コンタクトしてきた人がシモンを迎えにくるんだが、
ホテルを出る時に金属探知機が鳴っても、
誰も止めに来ないのもクスッとさせてくる。

…いや笑えないんだけどさ。

そしてこの一連の流れで、
少しだけ気が緩んでしまった私。

その瞬間だった。

膝から崩れ落ちてしまうほどの衝撃が待っていた。

ジャンヌが数学者であることが、
ここで効いてくる。

長々と説明されるわけじゃない。

シモンの一言で、すべてが繋がってしまう。

この演出が凄まじかった。

ジャンヌと一緒に
ファッッッ?!?!?!!!って声出たよ。

この真実の胸糞度合いに言葉も出ない。

なのに、
この分からせ方があまりにもオシャレで、
感覚がバグりそうになる。

そこからは、もはや放心状態。

ぼんやり画面を観ている私。

ナワルが亡くなる前の回想が最初にあったが、
プールサイドで放心していた彼女と同じだった。

この双子は、
真実を知らない方が幸せだったのでは…?

でも彼女が伝えなければ、
真実は闇に葬られてしまう…。

そんな思考の渦の中で、
最初は理解できなかった彼女の遺言が、
私の心に刺さってくる。


ストーリーの構成が、本当に素晴らしい。

双子と一緒に真実を追ううちに、
こちらも知らずにはいられなくなる。

でも今は、
知らなきゃよかった、とまで思う。

「真実を知らない幸せもある」

そんな言葉が、
こんなにも身に沁みる日が来るなんて。

足を踏み入れたら最後。

私はもう、

この映画を知らなかった頃には戻れない。

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